理想の間取

さて、仕事柄たくさんのお宅を訪問してみると、実に色んな間取りがあることに気づきます。客間をちゃんと用意してある家もあれば、リビングで応対する家もあります。子供部屋をちゃんと与えている家もあれば、そうでない家もあります。これらの違いは実に興味深いものですので、第3回は「間取り」というものについて少し考えたいと思います。

■狭い家をどう仕切るか
さて、東京圏に住んでいればなおのこと、住宅コストというものは非常に高い。たとえば2011年12月末時点で賃貸募集中の世田谷区の賃貸住宅の㎡当たりの単価(/月)は9,884円(R-STORE調べ)、港区になればもっと高額になります。つまり、1㎡広い家に住みたいとなれば、それだけ家賃を余分に支払わなければならないわけで、必然的に「狭い家をどう有効に使うか」ということが東京で快適に素敵に暮らすには避けがたいテーマになってきます。では、自分にとって快適な間取りとはどんな間取りなのでしょうか?

■nLDKの誕生
間取りを表現する際にnLDKという言い方をします。
これは戦後、の公営住宅において「寝食分離」、「就寝分離」という考え方を目指したことに由来しています。寝食分離すなわち、寝る場所と食事する場所を別の部屋にしようという考え方です。信じ難いかもしれませんが、それまでの日本の住宅はちゃぶ台で夕飯を食べ、ちゃぶ台を片付けて、同じ部屋に布団を敷き寝ていたんですね。星一徹はちゃぶ台をひっくり返したあの部屋に布団を敷いたわけです。まあ、冷静に考えるとそれも衛生的にどうなの?という話があり、こういった考え方がうまれました。就寝分離は子供の寝る部屋と親の寝る部屋をわけよう、ということですね。それが後のnLDKの原型になりました。(※1)

■いきすぎたnLDK
しかし、過ぎたるは及ばざるが如し。いつしかnLDKという間取りに生活が規定されるという逆転現象がおこります。本来はより快適に暮らすために考案されたnLDKという概念ですが、nの数を競うわけです。さすがに最近は無いようですが、55平米3LDKなんてのもありました。もうこうなってくると、いくら3LDKとは言っても、ダブルベッドなんて置けたもんじゃありません。空間を有効に使ったつもりが、リビングだって8帖程度。部屋数は確保したものの貧しすぎるじゃないですか。寝食分離や就寝分離が目指した理想はどこへ行ったのでしょう?(※2)

■(n-1)LDK
で、R-STOREでは(n-1)LDKが良いんじゃないかと思っています。本来なら3LDK必要だと思ったら同じ面積で2LDKを借りてみる。2LDKが必要なら同じ面積で1LDKを借りてみる。改装できる場合は3LDKの家を2LDK にしてみる。しかも往々にして部屋の一つは将来の子供部屋とか、年に数度しか使わない客間とかそういったことのために確保されていて場合が多いのです。それらを思い切ってなくしてしまう。いいじゃないですか、子供部屋は子供が大きくなったら考えましょう。その自由度が賃貸住宅の良いところなのです。
そうすると、驚くほど空間に余裕がでます。たとえばその余裕を利用して大きな本棚を置いてみる。ソファをおいてみる。もしくは自転車やサーフボードといった趣味のものをディスプレイしてみてもよいかもしれません。そうすると心にもすごく余裕ができるんですね。子供だって広い部屋ならのびのび遊びます。

■こんな間取りもある
たとえばnLDKという考え方を捨てれば、こんな間取りだって可能です。(※3)
この間取りはキッチンもリビングもベッドルームも全部が繋がっています。いうなればワンルームなんでしょうか?そして全てが廊下のようでもあります。部屋という仕切りがないから、空間を全体として感じることができ、とても広々としています。それに色々な方角から光がはいるので、とても明るいし、気持ちの良い風も通ります。(※4)

nLDKのnを増やすために、ジメジメとした寒い部屋や、窓のない部屋をつくるよりも、ずっと快適な空間がここにはあります。もちろん、複数人で住むなら音の問題もあるでしょう。しかし、nLDKを捨てることで得られるものは決して少なくはないのです。
確かにこれはあまりに大胆かもしれません。ですから、まずは(n-1)LDKから始めてみませんか?きっと素敵な暮らしが実現できますよ。

※1 公団住宅初めて実現した2DK。両親の部屋、子供部屋、DKが分離された。
※2 60平米3LDKの間取り。LD7.5帖じゃソファも置けません
※3 回廊型の間取り。全ての部屋がぐるっと繋がっている。
※4 グレーの壁の周りを居室がぐるっと囲んでいるのだ。