駅からの距離を考えよう

第10回は少し趣向を変えて賃貸不動産の契約について書きたいと思います。

■不動産屋に急かされる
不動産業をやっていると、友人のプライベートの相談をたまに受けるときがあります。
「まあまあ気に入っている物件が見つかったんだけど、今日申し込まないと他の人に決まっちゃうって言うんだよ・・・どうすればいい?」
「不動産屋にすごく急かされているんだけど、申込みしちゃって大丈夫なの?」
同じような経験をお持ちの方は少なくないでしょう。

不動産屋はバブルの時代を経て、利益のためなら何でもやる悪徳業の代名詞のように思われ続けていますから、もっぱら不動産屋の利益のために契約や申込を急かされていると思いこむようです。そこで、第三者の意見、しかも業界人としての意見を求めて私に相談が来るわけです。

■不動産という商品の特性
私から言わせると、不動産屋の言うことは、間違ってはいません。例えば、本当に自分以外の他の人が申し込んでしまうのか?今申し込まないとダメなのか?本当に「今」なのか、他の人が「いる」のかと言われれば、それは多少の脚色はあると思って良いでしょう。
しかし、不動産が車や他の商品と全く違う点は、「一つとして同じ不動産はない」ということなのです。

ですから、私がお客様から「早めに申し込まないとダメですか?」とか「しばらく考えても大丈夫ですかね?」と聞かれた場合、誠意をもって「もし、他の人に契約されて後悔すると思うのなら、すぐに申込した方が良いです」とお答えします。
結果として1ヶ月後もその物件は相変わらず空室のまま、という場合もあります。6ヵ月たっても空室の場合もあります。でも、その部屋は世界中に一つしかない限り、一度失えば、次に手に入れられるチャンスは数年後になってしまうのです。
ここが、不動産と他の商品の決定的に違う部分です。

私が経験したケースで、4ヶ月間空室が続いた物件に、1日で3人の申込があったケースがあります。そのときは、弊社でご検討いただいた方はタッチの差で物件を逃してしまいました。それ以降、「申込は早い方が良いです!」とオススメするようにしています。
これは、利益のためでもなんでもない、不動産という商品の特性ゆえの仕方がないことなのです。

■「申込」と「契約」の違い
最後に、ここまで読んでくださった方の中で「申込と契約って違うの?」という疑問を持たれた方のために解説させていただきます。通常の不動産賃貸取引は「申込」と呼ばれる賃借人候補者の意思表示から始まります。これは「借りたいです」ということを書面で大家さんに伝える行為です。それを受け取った大家さんは、希望の家賃や、候補者の属性、年収などを加味し、入居の許可をするかどうか判断します。これは通常「審査」と呼ばれます。晴れて審査に通過すれば「契約」となります。これは「賃貸借契約書」という書面に、賃借人・大家さん双方が署名捺印する行為です。
まとめると「申込」⇒「審査」⇒「契約」というフローになるわけです。

逆に言うと、申込というのは契約とは違いますので、いつでも無条件に撤回可能なんです。こう言うと他の業界人に怒られそうですが、もっと「気軽に」申込しても良いと、私は思っています。